2020.06.11
食道癌とmicroRNA
食道癌は早期の段階で発見すると内視鏡切除などの患者に負担の少ない治療で完治することも可能となるが、進行癌では予後不良であり、また転移性した場合は根治は難しく、抗癌剤治療や放射線治療などを組み合わせた負担の大きい治療となる。
そのため、早期診断が可能な簡便で有用なバイオマーカーの開発が必要であり、食道癌の治療成績向上、および患者のQOLに急務の課題である。
最近の研究で、食道癌患者の血液(血清)中microRNAをバイオマーカーとして網羅的に解析し、健常者と比較し有意に変化する多くのmicroRNAを同定した統計的解析により、食道癌患者を特異的に判別できる診断モデルがある。
解析対象例を探索群と検証群の2つに分け、その精度を検証した結果、同モデルは検証群の食道癌患者全体の96%を判別することが可能であり、診断精度の極めて高い(感度96%、特異度98%)診断モデルの作成に成功したことを確認している。
またステージ別の検証においては、ステージ0、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIVの患者群それぞれを89%、95%、98%、97%、100%の感度で陽性と診断でき、早期癌の段階での診断が可能となっている。
これらの研究により、食道癌スクリーニング検査確立の実現に向けて大きな前進が強く期待でき、非侵襲的な採血による血中microRNAの測定で早期食道癌を発見し内視鏡的切除により完治させることも可能となる。