原因
上記の一連の症状は、ほぼ同じ原因から発生します。そのため、類似した症状となりますが、ヒトによって感じ方が変わるため症状名が変わります。
胃の器質低下
主に上部消化管である胃に器質的病変がある場合に起こります。
最も多い原因は、ピロリ菌の感染による萎縮性胃炎によって発生します。
長期間、ピロリ菌によって胃粘膜が傷害を受けて粘膜が萎縮し胃酸の分泌が低下し食物を消化する能力が落ちます。胃壁も薄くなり食物を十二指腸へ運ぶ機能が低下し、胃もたれや食欲不振が起こります。
胃の機能低下
多くはストレスやうつ状態による心因性の食欲不振で、自律神経が乱れ摂食中枢が機能せずに食欲が湧かなくなります。
特に、長期間ストレスが続くと、脳の視床下部の指令によりストレスホルモンであるコルチゾルが分泌されます。このホルモンにより胃周囲の血管が収縮して血流が低下し胃粘液の分泌が低下したり胃壁の動き自体も悪くなります。
以前はストレス性胃炎と診断されていた病態を含め、新しく「機能性ディスペプシア」という広い概念として確立しました。
疾患によるもの
ピロリ菌感染による萎縮性胃炎や機能性ディスペプシアが原因として多いですが、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍なども起こります。
また、逆流性食道炎は、胃酸の食道粘膜障害により主に胸焼けや胃痛症状が出ますが、胃もたれのような症状が出ることもあります。
胃腸以外の疾患としては、肝炎や膵炎また甲状腺機能低下症や副腎機能低下症なども考えられます。
薬剤によるもの
痛み止めや抗生物質をはじめとして、多くの薬剤は長期に服用すると副作用として食欲不振が認められます。
考えられる病気
萎縮性胃炎
幼少時にピロリ菌に経口感染することにより発生します。
長期間、ピロリ菌により胃粘膜が萎縮・消失することにより、胃酸分泌や蠕動運動機能が低下し、食欲不振や胃もたれが発生します。
ピロリ菌の感染の有無を調べ、陽性の場合は速やかに除菌療法を行い萎縮の進行を止めます。
機能性ディスペプシア
内視鏡検査では胃粘膜に異常を認めないにも関わらず、食欲不振や胃もたれなどの症状がある場合、「機能性ディスペプシア」と呼ばれます。
原因として、ストレスや様々な心因性要因が考えられ、このような胃の機能不全を総称して「機能性ディスペプシア」いう概念が確立しました。
必要な検査
胃カメラ検査が必要です。
治療
薬物療法
ピロリ菌による萎縮性胃炎や機能性ディスペプシアに対しては、消化管運動賦活剤や消化管運動機能改善薬を投与します。
多種多様な薬剤が販売されており、約1ヶ月で効果が現れない場合は他の同種薬剤に変更することも重要です。
また、現在服用中の薬剤の副作用による可能性がある場合は主治医にご相談して下さい。
生活習慣の改善
ストレス社会においては非常に難しいですが、できるだけストレスを溜めずに規則正しい生活を送るよう心掛けます。うつ病がある場合は専門の神経内科を受診して下さい。
食欲不振が続く場合は早めに当院へご相談下さい。
<監修責任者>
医潤会内視鏡クリニック 理事長 中西弘幸