2025.12.03
年代別に変化するピロリ菌感染と胃酸分泌の関係
ピロリ菌が胃に与える影響は、実は年代によって大きく姿を変えます。若い世代では、感染に対して胃粘膜が強く反応し、炎症がはっきりと現れますが、まだ萎縮が進む前の段階であるため胃酸分泌は比較的保たれています。自覚症状が少ない一方で、炎症の強さだけが先行しやすい時期ともいえます。
ところが、感染したまま年月を重ねる中年期に入ると状況は変わってきます。長く続く慢性炎症によって胃粘膜のダメージが蓄積し、次第に萎縮性胃炎へ移行していきます。萎縮が進むにつれて胃酸分泌はゆっくりと低下し、胃の防御機能も弱まるため、胃の不調や将来的なリスクが目に見えにくいまま高まっていく時期でもあります。
高齢期に入ると萎縮が進み、胃酸低下がより明確になります。胃酸が不足すると鉄欠乏性貧血や食後の膨満感、腸内細菌叢の変化など、胃以外の不調が現れることもあります。
このようにピロリ菌感染の影響は年齢とともに「炎症→萎縮→胃酸低下」と段階的に変化するため、若年期は炎症、中年期は萎縮、高齢期は胃酸低下と、それぞれの年代で注目すべき点が異なります。年代に応じた内視鏡評価と適切な除菌は、長期的な胃粘膜保護と胃がん予防に重要です。
