近年は、内視鏡検査が普及し、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術が標準治療となり、早期胃癌の段階で発見・治療されるため進行性胃癌数は減少している。

しかし、依然として、本邦における進行性胃癌は、罹患率・死亡率ともに上位を占める癌である。

進行性胃癌に対しては外科的手術が施行され、転移などの難治性胃癌に対しては抗癌剤治療も行われる。

しかし、抗癌剤治療の継続と共に、癌細胞自体が抗癌剤に対し耐性を持ち始め、やがて効果が消失するが、今回、そのメカニズムが明らかにされた。

癌細胞周囲は、がん微小環境とよばれる様々な細胞によって構成され、癌関連線維芽細胞(CAFs)は様々な因子を分泌することにより癌の悪性度を高める。

胃癌症例の組織において、癌関連線維芽細胞 (CAFs)の量が多くなれば、進行や病状が悪化することがわかった。

この関係は抗癌剤を使用した進行性胃癌においても同様の結果であった。

次に、ヒト癌関連線維芽細胞 (CAFs)の培養上清で培養した胃癌細胞株が抗癌剤抵抗性を獲得することを示した。

また、癌関連線維芽細胞 (CAFs)由来のAnnexinA6を発現する細胞外小胞 (EVs)が、胃がん細胞の抗癌剤抵抗性に重要な働きをしていることがわかり、AnnexinA6は胃癌細胞にはほとんど発現せず、癌関連線維芽細胞 (CAFs)だけに存在していることが明らかになった。

これらより、AnnexinA6が細胞外小胞(EVs)を介して胃癌細胞に取り込まれることで抗癌剤抵抗性獲得に関わり、さらにAnnexinA6は胃癌細胞内に取り込まれた後、胃癌細胞膜上のβ 1インテグリンを安定化させ、下流のシグナルを活性化することで抗癌剤耐性の獲得に寄与することが明らかになった。

今後、胃癌においてAnnexinA6やがん関連線維芽細胞 (CAFs)をターゲットにした新たな創薬開発が期待される。

本研究の成果は、米国学術誌「Cancer Research」に公開された。