近年、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は標準治療となっている。以前は外科的手術を行っていた早期胃癌に対してESDを行うことはQOLの点からも非侵襲的であると思われる。現在、早期胃癌の外科的切除後の疾患特異的5年生存率は99%であるため、リンパ節郭清を行わないESDの対象は転移の危険性が1%未満であれば、外科的切除と同等と考えられる。そのため、ESD適応の条件は、転移の可能性が1%以下であることが条件となる。これを1% barrierと呼ぶ。

しかし、80歳以上の早期胃癌に対する外科的手術後90日以内の死亡率が1%を越えるため、1% barrierにおける意義の存在も議論されている。

現在、本邦において行われている80歳以上のESDは全体の20%である。

80歳の平均余命が8.5年であるのに対し、粘膜内胃癌が進行癌になるまで8〜12年を要することと照らし合わせると、外科的手術に比べると非侵襲的ではあるが、余命とQOLを考慮しつつ、高齢者早期胃癌に対するESDの適応のガイドラインも必要となると思われる。