食道表在癌は、深達度および脈管侵襲の有無がリンパ節転移のリスク因子である。

食道粘膜下層浸潤癌(SM癌)は、20〜40%でリンパ節があるため、外科的切除および化学放射線療法(CRT)が推奨され、リンパ節郭清を含む食道切除術が標準治療となっている。

手術後5年生存率は70〜80%と高いが、Ⅰ期であっても進行癌と同じく食道亜全摘と領域リンパ節郭清と胃管または結腸による再建術が必要となる。

このように、食道癌におけるCRTは身体に過大な侵襲を与えるため、腫瘍が比較的浅い場合の深達度診断や脈管侵襲の有無などを臨床的に正確に診断する必要がある。

術前にSM癌と診断されて食道切除やCRTを受けることは、結果的に粘膜内癌症例においては過大・過剰治療となる可能性がある。

このため、内視鏡治療を先行させ、深達度や脈管侵襲を評価し、リンパ節転移リスクが高い症例に対してのみ追加切除を行うストテラジーが考えられ、JCOG0508試験では、診断的内視鏡切除と追加CRTの有効性が示唆された。

今後は、追加CRTを行った症例における再発のリスク評価や画像強調内視鏡を併用した術前診断の精度向上に基づく治療の選択データの蓄積が必要となる。