Barrett食道には、SSBE由来とLSBE由来があるが、LSBE由来のBarrett食道癌の特徴として、同時性・異時性多発リスクがある。

Barrett粘膜を全割して検索し、顕微鏡的微小癌が見い出されたのはいずれもLSBE腺癌であり、LSBE腺癌における多発病変リスクの高さが指摘されている。

LSBE腺癌、SSBE腺癌における多発病変の頻度はそれぞれ、50%、13%であり、LSBE腺癌に有意に多発病変を認めることが報告されている。

LSBE腺癌の多発病変の中には、切除標本の背景粘膜に見い出された顕微鏡的微小癌も含まれており、内視鏡的に指摘することの困難な多発病変が存在することを意味する。

さらには、腫瘍·非腫瘍の鑑別が困難な異型腺管のうちで、p53免疫染色により腫瘍性であることが確定したものも含めれば、肉眼的評価やHE染色標本に対する病理組織学的評価においても認識の難しい初期病変が、LSBEの背景粘膜内に多発性に存在している。

LSBE腺癌外科的切除例において、背景粘膜を含めたすべての切片にp53免疫染色を施行した報告では、p53蛋白のびまん性強陽性像ないし完全陰性像を示す微小病変が認められ、潜在的な多発病変ということができる。

切除標本の背景粘膜内に認められた場合は同時性多発病変と扱われるが、内視鏡治療後の経過観察中にそれらの初期病変が顕在化すれば異時性多発性病変と扱われる。

このように、内視鏡検査時において、LSBEにおける多発性病変の頻度の高さを意識しておくことは重要である。