近年、増加傾向にあるBarrett食道に対して病理組織学的研究が盛んになされている。

Barrett食道腺癌の発生リスクは、SSBEとLSBEが同様であるという報告が存在するものの、SSBEの発癌率はLSBEよりも低く、SSBEの発癌率は0.03~0.07%/yearに対して、LSBEの発癌率は0.22~0.31%/yearと報告されている。

これは、組織型で考察すると、LSBEには腸上皮化生が多くみられるため、腸上皮化生のある粘膜がやはり発癌しやすいと考えることもできる。

しかし、一方で腸上皮化生を有さない粘膜を背景に発癌することも報告されている。

Hp感染による胃癌発生母地が萎縮性胃炎・腸上皮化生に存在するが、SSBE由来Barrett食道腺癌はcardiac mucosaと同様の胃型形質を有しているものが多いと報告されている。

また、SSBE由来Barrett食道腺癌内には、表層部でMUC5ACが陽性となり、深部でMUC6陽性となる成分が確認できる。

この構造はcardiac mucosaと同様であり、SSBE内のBarrett食道腺癌がcardiac mucosaに由来していることが示唆される。

ただし、SSBE由来Barrett食道腺癌は腸上皮への分化や維持に必要な転写因子であるCDX2に陽性となることが多く、Barrett食道腺癌の発生母地は、完全な胃型形質を有する粘膜よりは、腸上皮への分化傾向にあるものが多い。