ほとんどの胃癌はHP感染によって発生するが、印環細胞癌も多くはHP感染粘膜を背景に発生する。

しかしながら、HP未感染の正常粘膜にも発生することが知られており、またHP未感染胃癌のなかでは最も多い組織型である。

内視鏡像は、裾色調の平坦型病変として認められ、組織学的には、細胞内粘液が豊富で偏在核を有する「典型的な」印環細胞が増殖帯の高さを中心にみられる例が多い。

HP未感染例は、HP陽性例と比較し、増殖帯に限局した分布を示す例が多く粘膜全層に広がる例は少ない、最大径が小さい、Ki-67陽性率が低いなどの特徴がある。

遺伝性びまん型胃癌に対して、予防的胃全摘した場合、印環細胞癌の微小病巣が無数にみられることがあるが、この場合も同様の組織像を呈する。

このタイプの印環細胞癌の早期病変は、長期にわたって臨床的な癌に進展する緩徐進行性の腫蕩と考えられる。