胃内視鏡検査により発見された胃癌は、進行とともに胃の内側から外側へ向けて進行し、漿膜を突き抜けて腹腔内に腹膜播種を起こす。

腹膜播種の状態においては、癌細胞が転移した臓器が線維化することにより、腸閉塞や閉塞性黄疸を引き起こすだけでなく、抗癌剤や免疫担当細胞がターゲットとする腫瘍にまで到達しない。

今回、播種巣における線維化が高度になるに従い腫瘍に浸潤している肥満細胞数が増加しているため、肥満細胞と腫瘍の線維化の相関関係の調査が行われた。

以前から全身性硬化症やクローン病における臓器の線維化にはIL-17Aが関係していると報告されているため、播種巣におけるIL-17A産生細胞を調べると、肥満細胞自体であることが分かり、腹腔内の臓器を覆っている腹膜中皮細胞にIL-17Aを加えると、腹膜中皮細胞は線維芽細胞に形質転換し、コラーゲンなどを分泌することが明らかになった。

さらにマウスの腹腔内に胃癌細胞株とIL-17Aを同時に投与した場合、腹膜播種巣の数やサイズが増大し、腫瘍内の線維化の程度も増強することも明らかになった。

これにより、肥満細胞のIL-17Aの分泌防止が播種巣の線維化を防ぐことになることが示唆される。

今後は、マウスを用いた線維化を伴う腹膜播種モデルを作成し、肥満細胞の機能を抑制する抗アレルギー薬などの薬剤によって腫瘍の増殖や線維化を制御することにより、胃癌腹膜播種の新しい治療法開発につながることが期待される。

本研究成果は、国際学術誌『Gastric Cancer』のオンライン版に掲載された。