近年の高齢化社会による骨粗鬆症が増加の一途を辿っている。

ビスホスホネート(BP)製剤は、骨で破骨細胞をアポトーシスに至らすことで骨吸収を抑制することから骨代謝改善薬として骨粗鬆症の治療に広く使用されている。

骨粗鬆症治療薬は多種にわたるが、骨折予防に豊富なエビデンスを有するBP製剤が第一選択薬として用いられる場合が多い。

しかし、副作用の一つとして、上部消化管粘膜傷害、特に薬剤の食道内滞留に起因する食道炎や食道潰瘍がある。

BP製剤による粘膜障害の機序は、窒素含有メバロン酸代謝阻害が細胞増殖障害を引き起こすことや薬剤の直接接触による粘膜への化学的刺激、また薬剤による消化管粘膜の酸に対する疎水性バリア機構の傷害が考えられる。

高齢者における胸焼けや嚥下障害などの上部消化管症状がある場合は、骨粗鬆症治療薬による発症を念頭に置き、服用既往を聴取する。

BP製剤服用患者においては、内視鏡検査を施行し、食道の炎症や狭窄などを認めた場合は、休薬を指示し、制酸薬の変更や粘膜保護剤の併用などを行う。

また、食道高度狭窄所見を有する場合は、内視鏡的バルーン拡張術が必要となる。