Barrett食道腺癌は、炎症により胃食道接合部における食道粘膜である扁平上皮が円柱上皮に置き換わる病変であり、癌の発生に深く関与する。

PPIを長期投与することにより胃酸逆流が抑えられ、Barrett食道が再扁平上皮化し、Barrett食道長の短縮とそれによる発癌の抑制が報告されている。

従って、Barrett食道に関しては、PPIの長期投与による副作用の懸念を考量しながら、内視鏡検査による定期的観察が必要となるが、PPIによる酸抑制でBarrett食道は再扁平化し、扁平上皮で被覆された部位では腺癌の所見を直接観察することができないため注意が必要である。

炎症性変化を伴っている場合は、PPIを数週間投与して炎症による付加所見を抑制した後に画像強調、拡大観察、色素内視鏡、酢酸散布などのさまざまなモダリティを用いて範囲観察を行うことが肝要である。

特に、Barrett食道腺癌が扁平上皮と接している場合は扁平上皮下に腺癌が進展していることがあり(Barrett’s carcinoma under the squamous epithelium (BCUS))、癌が表面に露出していないため内視鏡診断が困難になりやすい。

このBCUSは、多くがSSBE由来のBarrett食道腺癌であり、内視鏡検査時には注意が必要である。