2020.09.24
胃カメラ検査時に発見されるピロリ菌未感染胃癌
ピロリ菌は、主に幼少時の経口感染により胃粘膜内に定着し、胃粘膜を侵食し、萎縮性胃炎を引き起こし、やがて胃癌発生母地となる。
胃癌患者のほとんどがピロリ菌感染または感染既往を有するが、ピロリ菌未感染の胃癌も認められる。
ピロリ菌未感染胃癌は、血清IgG抗体(3U/ml未満)、尿素呼気試験、培養法や鏡検法の少なくとも一つ以上の検査で陰性。内視鏡検査で居た胃体部下部小湾のRAC(regular arrangement of collecting venules)が陽性かつピロリ感染所見(diffuse redness ‘spotty redness’ mucosal swelling)がない。内視鏡切除標本で癌周囲粘膜に病理組織学的萎縮と腸上皮化生がなく炎症細胞浸潤が正常域のもの。以上全てを満たす病変とする。
ピロリ菌未感染胃癌は、男女差なく、年齢が比較的若く、U領域の病変が多く、未分化型の組織が多い。
ピロリ菌未感染胃癌の内視鏡的特徴としては、分化型では、胃体部に多く、色調は同色調で、肉眼型は0-Ⅱaまたは0-Ⅱa+Ⅱcが多く、表面構造は乳頭状が多い。一方、未分化型では、胃底腺・幽門腺境界部に多く、色調は褐色で、肉眼型は0-Ⅱbが多く、表面構造は平坦である。
ピロリ菌感染萎縮性胃炎が背景にある胃癌がほとんどであるが、未感染の肉眼的に炎症所見を持たない胃における癌は、ピロリ菌未感染胃癌として上記の注意が必要である。