Barrett食道腺癌は、炎症により胃食道接合部における食道粘膜である扁平上皮が円柱上皮に置き換わる病変であり、癌の発生に深く関与する。

炎症性変化を伴っている場合は、PPIを数週間投与して炎症による付加所見を抑制した後に内視鏡検査による定期的観察が必要となるが、PPIによる酸抑制でBarrett食道は再扁平化し、扁平上皮で被覆された部位では腺癌の所見を直接観察することができないため注意が必要である。

特に、Barrett食道腺癌が扁平上皮と接している場合は扁平上皮下に腺癌が進展していることがあり(Barrett’s carcinoma under the squamous epithelium (BCUS))、癌が表面に露出していないため内視鏡診断が困難になりやすい。

扁平上皮の構成細胞はtight junctionで結合されているため、その下に粘液分泌機能を有する癌腺感管が進展すると、分泌された粘液を排出する機構が必要となる。

癌腺管は扁平上皮に覆われてBCUSを形成する際、扁平上皮内を貫く構造を形成し、この構造は微細であるため、認識困難である。

1,5%酢酸を散布することによって、pHが低下しサイトケラチンの重合化を促進され、粘膜が白色化する(small white signs (SWS))ため、認識が可能になる。

従って、Barrett食道においては、通常では認識しにくい BCUSを、1,5%酢酸散布により白色化(SWS)させ観察診断することが必要である。