スキルス胃癌は、著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なものと定義され、びまん浸潤型の4型に分類され、初期には診断に苦慮する場合があり、進行時には転移を有する難治性癌として発見され、非常に予後が悪い癌である。

最近、多くの癌の発生・進展におけるゲノム解析が盛んに行われている。

スキルス胃癌においては、他のタイプにない特徴的なRHOA変異が認められ、ドライバーとして働くことが明らかになった。

また、多数の胃癌の包括的がんゲノミクス解析によって、CIS(chromosome linstable )/intestinel、GS(genomically stable)/diffuse-type、MSI(microsatellite instable)、EBV(+)(Epstein-Barr virus positive)の4型に分かれ、そのうち、スキルス胃癌はGSサブタイプと大きくオーバーラップし、通常の胃癌に比較して遺伝子変異や遺伝子増幅などのドライバーとなるがんゲノム異常が少ないことが明らかになった。

このスキルス胃癌は、免疫チェックポイント阻害剤に対し抵抗性を有し、抗PD-L1抗体の治験における奏効率はGSタイプで12%であり、スキルス胃癌は胃癌の中でも特徴的ながんゲノムプロファイルを持っており、現行の分子標的薬治療や免疫治療法には概ね不応である。

しかし、ゲノム解析により、上記の異常RHOAシグナルなどの新しい分子標候補が同定され、また、日本人集団におけるCDH1の高頻度な胚細胞変異も明らかになっており、効果的な予防・スクリーニングの指標となり、新しい治療法の開発が期待される。