2020.07.02
大腸CT検査時の鎮痙剤の有無
ブスコパンやグルカゴンは鎮痙剤の効能を有するため大腸内視鏡検査の前投薬として投与される機会が多い。
大腸内視鏡検査は肛門から回盲部までの全大腸にスコープを挿入し観察・治療を行う検査である。挿入時の物理的侵襲や比較的長い検査時間を要するため、腸管の蠕動や攣縮を生じやすく、そのために鎮痙剤が一般的に使用されることが多い。
しかし、心疾患、緑内障、前立腺肥大の既往のある患者には使用できず、その場合グルカゴンを使用する場合があるが、ブスコパンほどの攣縮抑制効果は期待できない。
また共にアナフィラキシーショックを起こすなどの副作用もあるため、慎重な投与が必要である。
一方、大腸CT検査においては、内視鏡検査のようなスコープによる物理的侵襲がないため、攣縮や蠕動亢進がなくブスコパンやグルカゴンを使用する必要性がないとされている。
実際、グルカゴンは大腸CTにおける腸管拡張の改善に寄与しないとされているだけでなく、バウヒン弁の弛緩を生じ、ガスが流入による膨満した小腸により大腸が圧迫されむしろ拡張は低下するとされている。
また、ブスコパンにおいても、使用した場合とプラセボを使用した場合で腸管拡張に有意な差がないことが報告されている。
むしろ、ブスコパンの使用により検査後の排ガスが停滞し被験者の受容性が低下する可能性が指摘されている。
このように、大腸CT検査は非侵襲的であるばかりでなく、ブスコパンなどの鎮痙剤を使用する必要がなく、前処置の下剤量の少なくて済み、また自動送気のみの身体位優しい検査である。
今後ますます大腸検査の需要が求められ、これからの医療ニーズに合った検査として期待される。