2020.06.25
胃カメラ検査時に発見されるNSAIDによる消化管病変
高齢者に多く発生する椎間板ヘルニアなどの脊椎病変による疼痛に対し、鎮痛剤として非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が使用される。
NSAIDの副作用として上部消化管の粘膜病変は広く知られているが、小腸・大腸にも粘膜病変を惹起することも明らかになってきている。
NSAID 起因性胃障害においては、NSAID の慢性投与に伴う潰瘍は幽門部から前庭に多発する比較小さな潰瘍、前庭部の深掘れ潰瘍、不整形の巨大潰瘍などが特徴とされる。
NSAID 起因性小腸障害においては、膜様狭窄と称される中心性狭窄が多い。これはNSAID の長期服用によって生じた管腔全周に及ぶ潰瘍性病変が治癒に至った所見と考えられている。
NSAID起因性大腸粘膜障害は潰瘍型、腸炎型に分類される。
潰瘍型としては、回盲弁上やハウストラの頂部に好発する浅い潰瘍底を有する境界明瞭なdiscrete ulcer の形態を呈する。
治癒と再発を繰り返すことによるハウストラに一致した求心性の狭窄を生じ、本症にきわめて特徴的な膜様狭窄を認める.
好発部位は、回盲部に多く、ついで上行結腸、横行結腸に見られる。
腸炎型は全大腸に見られ、発赤や出血を伴う浮腫状粘膜を特徴とする出血性大腸炎、その他アフタ性大腸炎などを呈する。
NSAIDs 起因性大腸炎の内視鏡所見、病理学的所見は抗菌薬関連大腸炎と類似する点が多く、両者は薬剤の使用歴による鑑別が必要となる。
NSAID 坐剤起因性直腸病変は、急性出血性粘膜病変型と、白苔を有する潰瘍形成を有する潰瘍型に分類され、また急性出血性直腸潰瘍や宿便性潰瘍などとの鑑別が必要となる。
このように、以前はNSAIDによる消化管病変は胃病変が多いとされていたが、小腸・大腸における病変の報告もされてきている。