2020.06.23
大腸カメラ検査時に発見される家族性大腸腺腫症とゲノム解析
家族性大腸腺腫症は、大腸に多数のポリープが発生し、一部が癌化する遺伝性疾患である。60〜80%にAPC遺伝子の変異が認められ、この遺伝子に変異があれば、ほぼ100%の確率で生涯に大腸癌が発症する。
このような疾患以外にも、遺伝子異常から発癌する疾患について、さまざまな種類の腫瘍を対象とした癌ゲノムの解析と配列決定を行う国際的な取り組みが行われている。
癌種のサブタイプには、数々の遺伝的異常が寄与しており、組織検査から得られる塩基配列解読データは、その時点での特定の部位で発生している遺伝的変化のスナップショットであるが、多数の癌検体で全ゲノム塩基配列解読を行えば、癌発生に関する事象をより包括的に把握できる可能性がある。
今回、がんゲノムコンソーシアム(ICGC;International Cancer Genome Consortium)およびがんゲノムアトラス(TCGA;The Cancer Genome Atlas)のがん種横断的全ゲノム解析(PCAWG;Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes)コンソーシアムにおいて、さまざまな癌検体と対応正常組織のゲノム全体を解析した結果が発表された。
そのなかで、癌ゲノムには平均4~5個のドライバー変異が含まれていることが報告され、また、解析対象の癌検体の多くから1個以上の癌ドライバー遺伝子が見つかったが、腫瘍の5%には明らかなドライバーが見つからなかったとしている。
これにより、新たなドライバーをさらに突き止める必要があることが確認された。
さらに、今回の解析は、癌ゲノムを特徴付ける変異過程の性質とタイミングを明らかにする上で役立つと考えられ、癌の早期発見の機会になることも明らかになった。
収集されたデータは、構造変化と遺伝子調節のデータセットを重ね合わせることにより、別の種類の変化を同定するための情報資源としても利用できる。
また、以上から患者の治療と転帰に関する臨床データを用いて、臨床転帰を予測できる遺伝的変化を特定することが次の段階になると指摘されており、今後、国際的な研究協調関係や知識交換が必要となる。