原因
便通異常である便秘と下痢症状は一見すると異なるように見えますが、原因としては基本的に同じ要因であり、運動機能と長さと心因性の3つに分かれます。
①運動機能
加齢による大腸の運動機能低下により発生する場合が多いです。
老化により全ての身体機能が落ちますが、排便機能は70歳頃より極端に低下します。
若年では、蠕動運動機能は低下していないため、症状が出る場合は下痢として発症します。
②大腸の長さ
大腸の長さは食生活により個人差があり、幼少時より野菜中心の場合は大腸は長くなり、肉食の方は短くなる傾向があります。栄養の少ない食物は少しで腸管内に滞留させ栄養を摂取しようとするため、幼少時より長期間にわたる菜食主義の場合、大腸は長くなり、便秘になりやすいです。
若年では、食事の欧米化により肉食が多く大腸の長さが短い傾向にあり、下痢を起こしやすいです。また、若年の場合でも、大腸腸管が長い方は便秘になりやすい傾向があります。
③心因性要因
鬱症などの心因的要因により便秘傾向となります。
逆にストレスや不眠など神経的な要因で大腸の蠕動が亢進することにより、便の流れが極端に速くなり下痢便として排出されます。ストレス社会により増加傾向にあります。
考えられる病気
大腸過長症・短腸症候群
大柄な体型で極端に大腸が長い大腸過長症では便秘になり、若年から菜食主義などの場合も大腸が長く便秘になりやすいです。
下記に記載したクローン病などで小腸を広範囲に切除した場合は短腸症候群と呼ばれ、高度の下痢になります。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、主に下痢症状が多いですが、便秘になる場合もあります。
神経病的障害
神経的障害の観点からの診断では、便秘の場合はうつ病やパーキンソン病を疑い、下痢の場合はストレスや不眠などの心因性要因が隠れていないか注意を要します。
便通異常の原因や考えられる疾患は頻度としては上記が多いですが、大腸がんの場合は便秘と下痢症状を併せ持つこともあり常に念頭に入れて診断を行います。
必要な検査
丁寧かつ詳細な問診とともに、大腸カメラ検査による確定診断を行います。
治療
薬物治療
便秘に対しては止瀉薬や整腸剤などで排泄調整をします。
下痢に対しては下痢型過敏性腸症候群治療剤により症状が軽減される患者様も多くなっています。
便通異常が続く場合は早めに当院へご相談下さい。
<監修責任者>
医潤会内視鏡クリニック 理事長 中西弘幸