胃癌症例のほとんどがH.pylori感染または既感染であり、胃カメラ検査時において除菌後のH.pylori既感染を疑う萎縮性胃炎の診断には注意が必要である。

H.pylori 除菌後の胃粘膜は、除菌時点までに進行した胃粘膜変化に応じて異なる。萎縮が軽度で腸上皮化生のない前庭部胃炎の除菌後は、わずか萎縮所見が残るのみである。

一方、腸上皮化生が進んでから除菌しても腸上皮化生は残存し、その一部は斑状発赤や地図状発赤を呈する。

除菌後長期の観察研究によって腸上皮化生が減少すると報告されているが、斑状発赤や地図状発赤が消失することはない。

地図状発赤や斑状発赤は除菌後1〜2カ月の早期に出現するが、除菌後の長期の観察で目立つようになるのは腺富上皮の過形成である。

体部胃炎が中等度〜高度の胃粘膜では腺富上皮過形成によって結節状の変化を呈することもある。