胃癌症例のほとんどがH.pylori感染または既感染であり、胃カメラ検査時においてH.pylori感染を疑う萎縮性胃炎の診断には注意が必要である。

しかしながら、H.pylori感染のごく初期には胃粘膜に肉眼的変化がない場合も多く、詳細な観察が必要である。

【H.pylori慢性胃炎初期】

前庭部を中心とした活動性胃炎(前庭部胃炎)が生じ、幽門腺領域に近い胃底腺領域にも炎症が及んでいく。

萎縮は軽度で腸上皮化生はみられない。

若年者ではリンパ濃胞が増生し、鳥肌状胃炎を呈する。

胃底腺が幽門腺化生し、偽幽門腺が形成される。

【H.pylori慢性胃炎中期】

H.pylori 感染が胃体部に広がり、胃底腺領域が広範囲に活動性炎症を示す汎胃炎となり、胃底腺の萎縮と偽幽門腺.腸上皮化生が前庭部から胃角や体部に広がる。

【H.pylori慢性胃炎後期】

体部活動性胃炎が広がり、胃底腺領域の萎縮、腸上皮化生が高度となるが、体部大鶴には胃底腺が残存する。

【H.pylori慢性胃炎晚期】

体部大彎も萎縮して活動性炎症は沈静化し、高度萎縮と腸上皮化生が主体となる。

このように、胃カメラ検査時にH.pylori感染の初期診断は困難な場合があり、注意が必要である。