2022.11.11
大腸カメラ検査時に発見される進行性大腸癌における化学療法耐性メカニズム
大腸カメラ検査の普及により、大腸癌が早期の段階で発見される場合が増えているが、未だ、進行性大腸癌で見つかるケースも少なくない。
外科的手術適応の進行性大腸癌は予後良好であるが、遠隔転移を伴う場合は化学療法が行われる。
大腸癌に対する抗がん剤は充実しているが、画像上消失しても再発し、やがて耐性を有して効果を失う。
今回、慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座(オルガノイド医学)らの研究グループは、大腸がんの増殖を司るヒトの“がん幹細胞”が化学療法後も死滅せず、再燃・再発につながるメカニズムを初めて解明した。
まず、ヒト大腸がんをマウスの体内に移植し、その動静をリアルタイムに観察する技術の開発に成功した。
この技術により、一部の“がん幹細胞”は休眠状態(増殖しない状態)にあり、化学療法を生き延びてクローン増殖することを明らかにした。
さらに、“がん幹細胞”が、細胞外基質(基底膜)にしがみつくことによって休眠状態を維持していることを見出し、また、基底膜との接着が弱まると、休眠状態のがん幹細胞は、YAPシグナルの活性化とともに、増殖を再開することが明らかになった。
それにより、YAPシグナルを阻害する薬剤が、化学療法後のがん幹細胞の再増殖を抑え、がんの再燃・再発を遅らせることを動物モデルで確認した。
この成果は、大腸がんの生命予後を決めているがんの再燃・再発に着目した新しい治療法の開発につながることが期待される。
本研究成果は、国際科学誌Natureに掲載された。