胃癌の発生原因は、主にH.pylori感染によるものである。

幼少時に経口感染し、長期にわたって胃粘膜を侵食しながら萎縮を発生させる。

胃粘膜には幽門腺領域・胃底腺領域・噴門腺領域が存在し、H. pylori慢性感染によって萎縮・腸上皮化生・幽門腺化生などの修飾を受けて粘膜が大きく変化する。

H.pyloriの慢性感染に伴う胃粘膜の経時的変化としては以下である。

H.pylori慢性胃炎初期には、前庭部を中心とした活動性胃炎(前庭部胃炎)が生じ、幽門腺領域に近い胃底腺領域にも炎症が及んでいく。

萎縮は軽度で腸上皮化生はみられない。

若年者ではリンパ濃胞が増生し、鳥肌状胃炎を呈する。

胃底腺が幽門腺化生し、偽幽門腺が形成される。

H.pylori慢性胃炎中期には、H.pylori 感染が胃体部に広がり、胃底腺領域が広範囲に活動性炎症を示す汎胃炎となり、胃底腺の萎縮と偽幽門腺.腸上皮化生が前庭部から胃角や体部に広がる。

H.pylori慢性胃炎後期には、体部活動性胃炎が広がり、胃底腺領域の萎縮、腸上皮化生が高度となるが、体部大鶴には胃底腺が残存する。

H.pylori慢性胃炎晚期には、体部大彎も萎縮して活動性炎症は沈静化し、高度萎縮と腸上皮化生が主体となる。