逆流性食道炎の増加により、食道癌の発生頻度が高まる事が予想される。

食道癌のほとんどは食道中部から下部に発生し、上部食道においては稀ではあるが、内視鏡検査時に下咽頭の梨状禍から食道上部に挿入する場合、特異な解剖学的要因である鋭角な屈曲に加え管腔の膨らみ不良のため、頸部食道観察には慎重を要する。

罹患数は継続して増加しており、高齢化に伴って今後も増加することが予想される。本邦でのリスク因子として、飲酒、喫煙、野菜・果物の摂取不足、口腔衛生不良などがあげられるが、近年、ALDH2遺伝子異常が発生要因として考えられている。

特に飲酒とALDH2遺伝子多型、飲酒と喫煙は相互作用をもって頸部食道癌のリスクを上昇させるため、これらの情報を確認することはハイリスク群の絞り込みにつながる。

また、ALDH2ヘテロ欠損型・ADH1Bホモ低活性型の遺伝子を保有する大酒家では、食道粘膜に多発ヨード不染帯を認めることがあるため、内視鏡検査時、ヨード色素散布はハイリスク群の絞り込みに有用である。

今後、遺伝子異常によるハイリスク群に対する効率的な上部消化管内視鏡検査のために、検査前のALDH2遺伝子測定が一つのサポートになると考えられる。