ピロリ菌検査や除菌療法の普及により、胃がんの発生は減少傾向にあるが、本邦において胃がんは未だ死亡原因の上位を占める疾患である。

経鼻内視鏡により被検者にとって検査時の苦痛は軽減されているが、胃がんをはじめとした胃疾患の診断には熟練を要する。

そのため、近年、AIを内視鏡に応用することによる診断サポートの研究・開発が急務となっているが、胃疾患におけるAI診断の対象は、H. pylori感染診断、病変の拾い上げ、胃癌の質的診断・深達度診断など多岐にわたり、特にAIによる胃癌の拾い上げ診断、質的診断に関しては多くの研究が必要であり、また、胃拡大内視鏡を用いたAI画像診断支援システムも少なからず報告されている。

今回、順天堂大学医学部消化器内科学講座とAIメディカルサービスなどによるAIを用いた胃癌診断の現状についての報告がなされた。

胃拡大内視鏡AI画像診断支援システムは、フルズーム浸水法を特徴としており、正診率98.7%、感度98%、特異度100%、陽性的中率100%、陰性的中率96.8%であり、既報の中で最も精度の高いシステムを開発することが可能となった。

しかし、リアルタイムに撮影される動画を用いた診断精度は不十分であり、今後さらなる改良が必要である。

日常臨床での内視鏡医の診断と同様、通常観察(白色光)でのAI胃癌診断にも限界があるため、胃拡大内視鏡AI画像診断支援システムの上乗せ効果が予想されており、早期の実用化が期待される。