食道癌は早期に発見されば、ESDなどの内視鏡切除により完治が可能であるが、ESD適応であるかの判断として深達度診断は重要である。

大阪国際がんセンターとAiメディカルサービスとの共同開発による食道AI内視鏡診断システムの製品化に向けての開発が行われ、非拡大観察によるSM1以浅の診断において、AIは内視鏡専門医と比べ感度が高く特異度が低かったが、これらを合わせた正診率ではAIが内視鏡専門医を上回る結果であった。

また、拡大観察によるSM1以浅癌の診断においては、AIは感度、特異度、正診率において内視鏡専門医と同程度の成績であるなどの静止画ベースでは、AIによる診断能力は内視鏡検査応用に可能であるとの報告がある。

現在、ESCC深達度診断のための動画ベースの第2世代AIの開発が行われている。

内視鏡的切除または外科的切除されたESCC症例に対し、撮影された動画と撮影された静止画をAIの教育用画像として準備し、909 例より計23,977枚(WLI 6,857枚、NBIBLI 17,120枚)の静止画を抽出した。

深達度EP-MMの症例に関しては病変全体をフリーハンドでマーキングし、SM浸潤症例に対しては、内視鏡画像と病理組織標本を対比し、SM浸潤部にのみマーキングを行い、 AIシステムのアルゴリズムは Single Shot MultiBox Detectorを使用した。

動画のうち、内視鏡的切除または外科的切除によって病理学的評価をされた102 例のESCCを対象とし、各病変の全体像や肉眼型が判定できる非拡大動画、および血管像の判定が可能なNBUBLI拡大動画を作成した。動画の長さはそれぞれ4~12秒であった。

それらの動画の症例が深達度SM1以浅, またはSM2以深かの診断を行うために、14名の内視鏡専門医による診断結果をAIと比較した。

第二世代AIは静止画1枚あたり0.033秒以内 30枚を0.99秒以下で処理でき、1秒間に30枚の静止画が含まれる動画をリアルタイムで診断できる処理速度であった。

非拡大観察によるSM2以深癌の診断において、AIは内視鏡専門医と比べ、感度や特異度がやや高く、正診率は有意に高かった。

また、拡大観察によるSM2以深癌の診断においては、AIは内視鏡専門医と比べ、特異度は有意に低いものの、感度と正診率は有意に高かった。

AIは非拡大観察および拡大観察で専門医よりも高い正診率を出しており、今後、食道癌の深達度診断においても内視鏡医の補助としての重要な役割を果たすと期待できる。