食道癌は世界で罹患率第7位の癌であり、癌関連死の原因の第6位である。

本邦を含むアジア諸国において食道癌の大半が食道扁平上皮癌 (esophageal squamous cell carcinoma; ESCC)であり、その予後は不良であるが、内視鏡検査で病変を早期の段階で発見できればESDなどの内視鏡切除による治療で完治が可能である。

ESCCの拾い上げに関しては、通常の白色光観察では早期発見が難しかったが、NBI (narrow band imaging)、 BLI (blue laser imaging)を含む狭帯域光による観察で発見率は向上し、現在では食道観察における主要モダリティとなっている。

しかし、 NBI観察におけるESCCの発見率もexpert と non-expert の間では有意な差(100% vs.53%, p<0.001)があったとの報告もあり、また、内視鏡操作や食道癌の観察に熟達していても、見逃しが発生する可能性をゼロにすることはできない。

内視鏡医の知識不足や不注意によって食道癌の見逃しが起こった場合、内視鏡治療の機会が失われることになり、患者にとって重大な損失であると考えられる。

ESCCの拾い上げに関して、精度の高いAIシステムが開発できれば経験や知識の不足、または不注意によって生じる見逃しも防ぐ safety net としての役目が期待できる。

現在、世界初の食道におけるAI内視鏡診断システムの製品化に向けて開発が行われている。