2021.04.16
病理診断AIによるゲノム異常解析
病理診断は、内視鏡時生検検体だけでなく、乳がんに対する生検標本などにも行われる。
病理医の煩雑かつ難解な診断時の労力に対して、生検診断以外にも病理診断への応用が期待されるさまざまなAIが開発されている。
乳癌のリンパ節転移の検出精度を評価する国際コンペティションにおいては、最も精度の高かったAIはAUC 0.994 と病理医に匹敵する精度を示している。
また、FISH Auorescence in situ hybridization)においては、CNNを用いた深層学習により、AIによる判定結果と病理医の判定結果がほぼ一致するところまで精度が向上している。
また、癌の遺伝子異常は分子標的薬の反応性を予測するバイオマーカーとなりうるものであり、大腸癌においては RAS、BRAF遺伝子変異やMSIの検索が日常的に行われている。
遺伝子異常の検索のためには遺伝子検査用の追加の標本作製やPCR(polymerase chain reaction)、免疫組織化学的検索など時間と手間のかかる作業が必要となる。
一方で、病理組織画像から遺伝子異常を予測する手段は、唯一すでに作製されているHE染色標本のみからであり、これをデジタル化しAIに投入すればよいため、従来の方法より極めて低コストかつ短時間で結果を得ることできる。
したがって、病理組織画像から遺伝子異常を予測する手法は、迅速な治療方針の決定や医療費の削減に大きく貢献できる可能性があり、また全国的な病理医不足の中、病理医の負担軽減につながると思われる。