遺伝子異常の状態を調べるためには、通常は遺伝子検査や免疫組織化学的検索などを行う必要があり、コストや労力を要し、また地域や施設によっては実施困難な状況も存在する。

近年の病理診断におけるAI技術の導入は、良悪性などの病理診断だけでなく、遺伝子異常の発見や治療に繋がる診断まで可能となっている。

胃癌は、近年の包括的分子解析により、代表的なTCGA (the Cancer Genome Atlas)分子分類では、DEBV (Epstein-Barr virus)、2 MSI (microsatellite instability)、3 GS (genomically stable)、O CIN (chromosomal instability)の4つのサブタイプに分類され、サブタイプごとに予後や治療への反応性が異なることが知られており、胃癌HE染色標本のデジタル画像からAIによりこれらのサブタイプを予測する試みも行われている。

それにより、EBV胃癌で感度81.0%、特異度98.4%、MSI胃癌で感度83.3%、特異度85.7%、全体の一致率82.9%の精度で予測することが可能となる報告がある。

EBV胃癌と MSI胃癌は腫瘍内のリンパ球浸潤が多いなど病理組織像に共通する部分があり、またこれらはいずれも免疫チェックポイント阻害薬に対する感受性が高いとされており、EBVまたはMSIのいずれかに該当する腫瘍とそれ以外の二値分類での精度も感度 87.9%、特異度87.8%、ROC曲線におけるAUC 0.947の結果も出ている。

今後は、より精度の高いソフトウェアの開発により他の消化管疾患に対する遺伝子精査および治療への応用が期待される。