2021.04.10
消化管疾患におけるAI病理診断
上下部内視鏡検査時に採取される胃・大腸生検検体は、病理医にとって診断機会の最も多い標本である。
厚生労働省が公開している2017年度のレセプト情報・特定健診等情報データベース によると、内視鏡下生検法は1年間に約380万件施行され、その大部分が胃または大腸生検である。
そのため、病理医の立場からは、AIの利活用による診断の効率化が期待される分野でもある。
NEC社の開発したe-Pathologistは、多くの胃・大腸生検の病理組織画像の学習により開発されたAIによる病理組織画像解析システムで、癌の有無を判定することができる。
胃生検では ROC(receiver operating characteristic) KİT AUC (area under the curve)0.956と高い精度を示し、閾値を適切に設定すれば感度95%以上、特異度67%程度となり、病理医の診断に対するダブルチェック、特に癌の見逃しの拾い上げなどに一定の有用性が期待される。
さらに最近では、病理組織画像診断 AIの開発を行うべンチャー企業の一つであるMedmain社が開発したAIは、胃腺癌の検出で ROC曲線のAUC 0.980、大腸腺癌の検出で AUC 0.975と高い性能を実現している。
このように、近年の病理検査分野におけるAI技術の発展は著しく、特に消化管癌の生検診断において深層学習を用いたAIにより、高い精度で正解が得られるようになってきている。