内視鏡検査時に発見された早期十二指腸がんは、ESDにより切除可能である。

十二指腸内腔は狭く屈曲しており、消化管壁が非常に薄いため、ESD手技的に困難な場合が多く、穿孔をきたす危険性が高い。

また、Vater乳頭部には胆汁や膵液排出の開口部があり、穿孔によりこれらの消化酵素が腹腔内に広がり腹膜炎などを発症するため、十二指腸切除などの緊急手術となる恐れがある。

今回、この重篤な合併症である穿孔を自己筋芽細胞シート貼付にて予防出来ることを動物実験で明らかにされた。

ブタの脚から骨格筋を採取し、骨格筋由来の細胞シートを作製し、十二指腸の外側から細胞シートを貼付した5頭と、細胞シートを移植せずに内臓脂肪のみを被覆した5頭において、ESDを施行することによる比較実験を行った。

内臓脂肪にて被覆した5頭では全例術後3日目に穿孔を認めたが、細胞シートを貼付した5頭では全例で穿孔は生じず、細胞シートの穿孔予防効果が確認された。

細胞シートは自身の細胞から作られ、貼付による機能を持つが、組織の一部に変化するのではなく、治癒能力を高める物質を出して治癒を促進すると考えられる。

動物実験で細胞シートの穿孔予防効果を確認することにより、今後、ヒト十二指腸をはじめ他の消化管における内視鏡治療時の偶発症に対して、細胞シートによる消化器再生医療を実現する上で重要なステップであると考えられる。

本研究成果は、Cell Transplantation誌にオンライン掲載された。