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Columnコラム

胃カメラ検査時に発見される食道癌と歯周病との因果関係

上部内視鏡検査の普及により食道癌の早期発見が増加し、ESDなどの内視鏡治療の進歩により早期治療も可能となっている。

その発生原因として飲酒や喫煙などが指摘されているが、近年、口腔内細菌も発生要因のひとつとして挙げられている。

本邦において最も多い口腔感染症である歯周病は、原因菌であるストレプトコッカス アンギノーサス菌の感染により、歯茎の炎症や出血が起こり、やがて歯を支える骨や線維など深い組織に炎症が広がり、最終的には歯が喪失する。

歯周病は糖尿病や動脈硬化などを含む全身疾患の悪化に関与しており、さまざまな癌においても歯周病がリスクを増加させる可能性があるとされている。

従来より、口腔内に存在する細菌や歯周病に関わる細菌が食道癌組織において発見され、またこれらのストレプトコッカス アンギノーサス菌を食道癌細胞に感染させると発癌が促進することがわかっている。

今回、食道癌と歯周病の臨床所見に基づいた、食道癌症例における口腔内所見と口腔内細菌叢の特徴が明らかにされた。

食道癌症例61名と非癌症例62名の口腔内の診察を行い、唾液と歯茎の下の歯垢より採取したサンプルから細菌の DNA を抽出し、リアルタイム PCR 法を用いて 7 種類の口腔細菌の菌数を計測した。

食道癌症例では非癌症例より歯周病の状態が有意に悪く、喫煙率や飲酒習慣が高いことがわかった。

歯茎の下の歯垢中には歯周病に関わる多くの細菌が有意に高く検出され、特にアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌は癌症例16人で検出されたのに対し、非癌症例ではわずか1名しか検出されなかった。

唾液では、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌の検出率が癌症例で有意に高く、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌とストレプトコッカス アンギノーサス菌の量が癌症例で有意に多く検出された。

次に、ロジスティック回帰分析を用いて統計学的に解析を行うと、飲酒習慣で 17.10 倍、歯垢中のストレプトコッカス アンギノーサス菌の検出で 32.80倍、唾液中のアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌の検出で 5.77 倍、食道癌症例が増加するという結果が得られた。

今後は、アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス菌やストレプトコッカス アンギノーサス菌、生活習慣のアンケート結果を組み合わせることにより、迅速で簡単な食道癌のスクリーニング方法への開発が期待できる。

本研究成果は、国際医学誌 Cancer(キャンサー)にオンライン版で発表された。