食生活の欧米化により、近年、大腸癌が増加の一途をたどっている。

大腸内視鏡検査による診断やESDなどの内視鏡治療の発達により治療の進歩により、早期大腸癌の段階で発見・治療され完治するケースも増えている。

しかし、転移性進行性大腸癌においては、外科的手術後に抗がん剤治療が選択されるが、完治させるまでには至っていない。

最近は、ナノ粒子に薬剤を内包させた集中的癌治療の研究・臨床応用も飛躍的に向上しているが、一方、生体内においてもナノサイズの小さな袋である細胞外小胞(EV)が癌の増殖・進展に関与する物質を内包していることが明らかになったきている。EV は、癌細胞から全身にばらまかれることで、癌の増殖・転移を促進するため、この EV を抑え込むことによる癌治療への期待が高まっている。

特に、エクソソームという EV が癌の増殖や転移と関連することは明らかであったが、今回、別種の EV(非エクソソーム)も癌の進行に関わる物質を含んでいることが報告された。

癌細胞の小胞体において、タンパク質の構成成分であるアスパラギンというアミノ酸に糖鎖が付くことにより、エクソソームと異なる EV を選択的に作り出していることが明らかになった。

これらにより、多様な EV が作られるメカニズムを解明していくことにより、EV を標的とした癌の治療法の開発に貢献することが期待され、大腸癌をはじめととした様々な癌治療に寄与すると思われる。

本研究成果は、米国の学術誌『Cell Reports』オンライン版に掲載された。