大腸上皮性非腫瘍性病変には、主に腺腫と過形成ポリープがある。

腺腫は癌化する可能性を秘めているため切除される場合が多いが、過形成ポリープは悪性化する危険性が少ないため放置されることがある。

しかし、上記のように考えられていた過形成ポリープのなかで鋸歯状病変を有する場合、癌化の危険性があるとされ注目を浴びている。

大腸鋸歯状病変には、過形成ポリープ、SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)、TSA(traditional serrated adenoma)およびSSA/P with cytological dysplasiaがある。

そのなかで、SSA/Pはboot様、逆T字と呼ばれる腺底部拡張、異常分岐像などの特徴的病理組織学的所見を認め、遺伝子学的にBRAF変異と高メチル化(CIMP-high)を示し、MSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変と認知されている。従来、癌化へのふたつのPathwayとして考えられていたAdenoma-carcinoma sequenceとDe novo発癌に加え、serrated neoplastic pathwayが第3の発癌ルートとしてSSA/Pが脚光を浴びている。

このように、癌化しないとされて重要視されていなかった過形成ポリープについての発癌メカニズムについては明らかでなく、臨床的取り扱いについても十分なコンセンサスが得られておらず、発生場所、内視鏡的肉眼および拡大所見、病理組織学的所見データなどのより多くの解析が進められるべきである。