近年、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は標準治療となっているが、穿孔や出血など様々な偶発症を発生する危険性をはらんでいる。高齢化社会である現在、本邦において行われている80歳以上のESDは全体の20%を占めるため、高齢者における偶発症は重篤化しやすくより注意が必要となる。

特に、高齢者においては、心臓や脳などの血管系疾患の予防のため抗血栓薬を服用していることが多い。そのため、高齢者におけるESDにおいては術中だけでなく後出血の危険性についても考えておく必要がある。

現在、医療現場において、様々な抗血栓薬が使用されており、休薬のうえESDが行われ、入院観察後投薬再開されるが、抗血栓薬なしの症例に比べ、抗血栓薬服用症例は2〜3倍の後出血を呈する。特に、アスピリンとチェノピリジン併用のDAPT療法が行われている症例では10倍近い危険性があり、ワーファリンやDOACなどの抗凝固療法も同様に後出血率が高い。

また、切除後2〜3週間経た退院後に出血することも認められるため、かなりの注意を要する。Second look内視鏡はあまり後出血の発見に適しないが、術後のPGAシート貼付などは今後のエビデンスが待たれるところである。また、OTSC(over the scope clip)や縫合針を使用した縫縮については、サイズや病変部位などから困難な場合が考えられ、後出血予防法の確率が切望される。