2020.11.28
小児クローン病の血液診断マーカーの開発
炎症性腸疾患(IBD)とは、小腸・大腸などの消化管に炎症が発生し、慢性的な下痢や血便、腹痛などの症状を伴う病気の総称であり、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つに大別され、30万人の患者がいると報告され、本邦で最も多い指定難病となっている。
IBDの診断には消化管内視鏡検査が必須のため、小児の場合検査による侵襲が大きい。そのため、内視鏡検査に代わる血液検査など体に負担の少ないバイオマーカーが必要となっている。
従来から、クローン病(CD)診断の血清マーカーとしてanti-Saccharomyces cerevisiae antibodies(ASCA)の有用性が欧米で報告されていたが、アジア人におけるASCAの感度特異度は欧米人に比べ劣るため、日本人に合った新規血清マーカーの開発が期待されていた。
今回、本邦における小児クローン病の血液診断マーカーとして、ACP353という抗体が有用であることが世界で初めて明らかにされた。
対象は、16歳以下の小児。CD、潰瘍性大腸炎(UC)、その他腸疾患、健常、以上の4群に分けて血清を採取し、ELISAによりACP353を測定し、またGP-2とASCAの測定結果も比較検討した。
ACP353の値(中央値U/ml)は、CD(2.25)がUC(1.1)、その他腸疾患(1.1)、健常(1.1)より有意(全てP<0.001)に高く、CDの診断精度に関しては、特異度95%の条件で、ACP353の感度は 45.0%で、GP-2(30.8%;P=0.023)とASCA(26.7%;P=0.017)より有意に高かった。
ACP353は本邦の小児CD診断の血清マーカーとしてGP-2やASCAより有用であった。
これらにより、本邦における小児クローン病の非侵襲的血液診断マーカーによる診断が期待される。
この研究成果は、専門英文誌のJournal of Gastroenterology(オンライン版)に掲載された。