2020.11.21
消化器癌におけるバイオマーカー
従来より、大腸腫瘍の発見には簡便で非侵襲的であり便潜血検査があるが、ポリープをはじめとした出血性疾患にとどまる。
そのため、大腸癌に対する身体に優しい高精度な方法が求められている。
そのなかで、訓練されたがん探知犬が高精度に癌患者呼気を嗅ぎ分ける研究が進んでいる。
呼気による癌診断は、被験者への負担が少ない診断法であるが、揮発性の呼気成分は、サンプルの管理が難しく、がん検知犬での高感度検出を超える機器による判定には至っていないのが現状である。
今回、各種乳癌細胞株である MCF-7、SK-BR-3、YMB-1 および正常線維芽細胞株 KMST-6 の培養液を用いて、癌細胞に特徴的な成分の網羅解析を実施し、乳癌細胞培養液に高排出される中鎖不飽和脂肪酸が明らかにされた。
さらに、これらの中鎖不飽和脂肪酸は、癌患者呼気に含まれると報告されている特徴的なにおい成分へと酸化分解されたことから、癌患者特有の呼気臭の発生との関連が推察される。
本研究成果は、同定された中鎖不飽和脂肪酸が乳癌判定のためのバイオマーカーの候補化合物となる可能性があるが、乳癌以外にも大腸癌やさまざまな癌種の発見の新たな指標成分として今後の展開が大いに期待される。
本成果は、米国科学誌「PLOS ONE」にオンライン掲載された。