2020.11.14
胃カメラ検査時に発見される遺伝性びまん性胃癌
遺伝性びまん性胃癌とは、ニュージーランドで、家系内に若年発症のびまん性胃癌が認められた3家系が報告され、後の遺伝学的解析ではそれぞれの家系でCDH1遺伝子の生来の病的変化と判明し、初めて遺伝学的に遺伝性びまん性胃癌と診断された。
本邦では、浜松医科大学医学部腫瘍病理学講座から初めて遺伝性びまん性胃癌が報告されている。
遺伝性びまん性胃癌は、CDH1遺伝子の生来の病的な変化が原因の病気で、The International Gastric Cancer Linkage Consortium (IGCLC) guidelines によると以下のいずれかが当てはまる場合にこの疾患が疑われる。
①第一度近親者あるいは第二度近親者に2人以上胃癌に罹患があり、そのうち1人がびまん性胃癌である場合。
②40歳未満でびまん性胃癌と診断された場合。
③びまん性胃癌と小葉乳癌の両方に罹患した既往歴、あるいは第一度近親者あるいは第二度近親者に家族歴があり、そのうち1つの疾患が50歳未満で診断された場合。
また、CDH1遺伝子の生来の病的変化を持っている場合、80歳までのびまん性胃癌の推定累積罹患リスクは男性で70%、女性で56%であり、さらに女性では乳癌(特に小葉癌)の累積罹患リスクが42%であるといわれている。
そのため、遺伝性びまん性胃癌が疑われる場合、CDH1 遺伝学的検査を受けることは、その結果を参考のひとつとして今後の発端者と家族の健康管理に役立つと考えられる。
さらに、世界で用いられている遺伝性びまん性胃癌のガイドラインでは、スクリーニング・サーベイランスのための内視鏡検査で必ずしも確実に遺伝性びまん性胃癌の関連病変が同定されるとは限らないとされているが、遺伝学分析を含めた総合的解析により遺伝性びまん性胃癌と診断された家系も複数存在する。
遺伝性びまん性胃癌のみならず、遺伝性大腸癌などの遺伝する消化器癌が疑われる場合は、ゲノム診療とともに内視鏡検査をおこなうべきであるが過度の不安を助長しないように努める必要がある。
この成果は、「Clinical Journal of Gastroenterology」に公表された。