2020.09.14
胃カメラ検査時に発見されるスキルス胃癌(原因遺伝子および治療薬)
スキルス胃癌は、著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なびまん浸潤型胃癌であるため、胃内視鏡による早期発見は困難な場合がある。
また、転移などを伴う難治性進行癌の状態で発見された場合は、化学療法も奏功しない事も多いが、これまでその原因遺伝子や治療標的分子は十分に解明されていなかった。
今回、原因変異遺伝子としてSTK11/LKB1を同定し、スキルス胃癌治療薬としてSTK11/LKB1関連シグナル系を制御するラパマイシンが有用であることが明らかにされた。
樹立したスキルス胃癌細胞株 6株を用いた遺伝子解析により、6株中3株に癌抑制遺伝子STK11/LKB1の変異が同定された。
さらにサンガ―シークエンス法で同遺伝子の変異を確認すると、STK11/LKB1変異型スキルス胃癌細胞ではSTK11/LKB1蛋白質の発現減弱や機能喪失も確認された。
また、胃癌細胞株にSTK11/LKB1関連シグナル系を制御するラパマイシンを作用させると、スキルス胃癌細胞の増殖が抑制された。
スキルス胃癌における原因遺伝子と治療標的分子を解明した世界初の研究であり、この研究成果によって、スキルス胃癌の治療が大きく前進すると考えられる。
本研究成果は、国際科学雑誌Carcinogenesisにオンライン掲載された。