胃液は、1日に約2L分泌され、胃液に含まれる主成分である胃酸とペプシノーゲンでたんぱく質を消化する。

ペプシノーゲンは、不活性前駆体の1つで、それ自身にはタンパク質消化作用はなく、胃酸の作用でペプシノーゲンがペプシンになって初めて消化作用を示す。

また、胃は糖鎖を含むムチンやプロテオグリカンを主成分とする粘液を分泌して、胃酸による胃粘膜への攻撃を防ぎ、自己消化を防衛している。

胃には、壁細胞と主細胞があり、胃酸は壁細胞から分泌され、ペプシノーゲンは主細胞から分泌される。

詳しくは、ヒスタミンは壁細胞のH2受容体を、アセチルコリンはM3受容体を、ガストリンはCCK2受容体をそれぞれ刺激して壁細胞が放出する胃酸分泌を促進させ、その胃酸によってペプシノーゲンはペプシンに変化し、消化を行う。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は広く普及している酸分泌抑制薬であり、有効であるが強力ゆえに副作用も多い。

長期投与によって、胃粘膜上皮に起こる初期の基本的変化は、壁細胞の腫大・変性である。そして、ガストリン値の上昇が発生することにより、幹細胞を刺激し壁細胞の増加・過形成が出現する。

この壁細胞の増加に副細胞の過形成も加わり、主細胞域は減少し、主細胞が全く認められない状態も発生し、ペプシノーゲンの分泌減少により消化機能も低下する。

PPI長期投与は上記の悪循環を惹起するが、日常生活において上腹部痛軽減は必須であるため、優先順位を考えながらの慎重な判断が求められる。