スキルス胃癌は、ギリシャ語の硬いものというスキロスから派生した病名で、臨床的には「胃癌取扱い規約」に準じて“著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの”と定義され、びまん浸潤型の4型に分類される。

幽門腺領域に発生し幽門狭窄所見を呈するものと、胃底腺領域に発生し胃体部がleather bottle様変形を呈するものの2つに大別される。

上記のように、潰瘍などの粘膜病変を有さず特異な胃の形状と硬さを示すため、胃内視鏡より胃造影X線検査のほうが早期の段階でスキルス胃癌を捉えやすいことも多い。

従って、検診の胃造影X線検査で拾い上げられるスキルス胃癌と異なり、日常の臨床における胃内視鏡検査では早期の段階でキャッチするのは困難な場合もあり注意が必要である。

幽門腺領域型スキルス胃癌は、中等度の萎縮や腸上皮化生を伴う胃体下部から幽門前庭部粘膜に発生した分化型腺癌が浸潤とともに未分化癌となり幽門前庭部の著明な狭窄をきたす。そのため、上皮性変化を伴い、びらんや潰瘍を認めることが多い。

一方、胃底腺領域型は原発巣が胃底腺粘膜領域に存在し、粘膜内進展に比べ粘膜下層以深に比較的広範囲にびまん性に浸潤する未分化癌であり、粘膜の交錯するベルギーワッフル様粘膜変化を呈することも多い。

ともに、壁硬化や進展不良を伴うが、初期像を捉えるのが困難なのは潰瘍形成の少ない胃底腺領域型であると考えられる。

胃内視鏡検査時には、送気により、胃体部大湾のひだを十分に進展させ、胃内部全体の硬化状態を調べ、不整な小びらんや陥凹を注意深く観察することであるが、最も重要なことは、常にスキルス癌を念頭に置きながら検査を行うことである。