食道・胃・大腸癌に対しては早期・進行性での発見の場合は完治するほどの目覚ましい医学的進歩がある。

しかし、転移癌のような難治性腫瘍の場合は、抗癌剤治療での完治は難しくさまざまな分子標的薬が開発され、最近は、従来の細胞障害性抗癌剤や分子標的薬とはコンセプトの異なる免疫チェックポイント阻害薬が脚光を浴びており、代表的なCTLA-4とPD-1・PD-L1,2がある。

⑴CTLA-4

細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)は、免疫応答を負に調節する免疫チェックポイント受容体であり、CTLA-4の阻害は、T細胞を直接賦活化し、制御性T細胞(Treg)によるT細胞抑制を解除し、長期にわたる抗腫瘍効果をもたらす。

抗CTLA-4抗体は、CTLA-4とB7(CD80/CD86)との結合を阻害することでCD28とB7の結合を可能にし、再活性化したT細胞の抗腫瘍効果が発揮することを促進する。

⑵PD-1・PD-L1,2

PD-1は活性化T細胞に発現する免疫チェックポイント分子であり、リガンドとしてPD-L1,2が存在する。

T細胞上のPD-1がPD-L1,2と結合するとT細胞が不活化され抗腫瘍免疫応答が抑制される。

抗PD-1抗体は、 T細胞上のPD-1に結合してPD-1とPD-L1,2の結合を阻害することにより抑制シグナルの伝達をブロックしてT細胞の活性を維持し抗腫瘍効果を回復させる。

また、抗PD-L1抗体は、癌細胞や抗原提示細胞が発現するPD-L1に結合してT細胞上のPD-1との相互作用を阻害し、それにより、T細胞への抑制シグナル伝達が阻害されT細胞の活性化が維持される。

このように、T細胞をはじめとした免疫サイクルを正常化するための抗体薬が今後ますます開発されると思われる。