食道癌は、現在、早期で発見できれば内視鏡切除により完治する疾患となっているが、進行癌では周囲臓器やリンパ節などへの浸潤転移も早く予後の悪い疾患となる。

microRNAは20前後の塩基配列を有するnon-coding RNAで,mRNAからの転写後翻訳レベルでの遺伝子発現制御を担っている。

その研究として、さまざまな手法を用いて、癌における過剰発現している場合と発現低下している場合などの発現量の変化がどのように癌の増殖・進展に関与しているかが調査されている。

たとえば、外科手術材料ホルマリン固定パラフィンブロック標本を用いて、扁平上皮癌である食道癌におけるmicroRNA発現をマイクロアレイ手法により検討した結果が報告されている。

microRNA-205が扁平上皮のマーカーとして極めて有力であることやmicroRNA-21は腺癌と同様に扁平上皮癌でも有意に発現亢進していることを明らかにし、miR-205とmiR-21の発現量を検討することで扁平上皮癌の分子病理診断が可能であることが報告されている。

さらに、培養細胞系を用いて、頭頸部扁平上皮癌の有力な予後関連因子である肝細胞増殖因子(HGF)において、癌の浸潤転移に関わる機能遺伝子の発現を調節しているmicroRNA(microRNA-200cおよびmicroRNA-27b)を同定し,これらの機能を阻害することで癌の進展を阻害できる可能性も示唆されている。

また,病理組織型Gleason分類を用いて、microRNAの発現量が高リスクの判定に対して有用なマーカーとなり得るなど、さまざまな手法を駆使して、食道癌におけるmicroRNAの発現量と診断・予後などの判定との関連性が調査・研究がなされている。

これらの研究の発展は、食道癌を予後の悪い進行癌の前にキャッチし、少なくとも食道癌手術のなかでは非侵襲的手術法である内視鏡的切除により治療を行うことができると期待できる。