2020.06.08
大腸カメラ検査時に発見される潰瘍性大腸炎の新薬
潰瘍性大腸炎は、免疫機構の異常により免疫細胞が腸管細胞を攻撃し、腸管に炎症を引き起こす疾患であり、国の「指定難病」に指定されている。
年々増加傾向にあり、2016年度の患者数(特定疾患医療受給証の所持者)は約16万8000人で、実際の患者数は20万人以上に上ると推定されている。
免疫機構異常が発生要因のため、根治することは稀で生涯治療を継続する必要があるが、寛解期と活動期を繰り返す疾患であるため、速やかに炎症を抑えて寛解状態にする(寛解導入)とともに、再燃を予防し、寛解を長く維持する(寛解維持)ことが治療の目標となる。
治療薬の中心となるのは、「アサコール」や「ペンタサ」などの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤であり、効果が認められない場合は、ステロイドや「イムラン」、「プログラフ」などの免疫抑制剤が使用される。
難治症例には「レミケード」や「ヒュミラ」などの抗TNF-α抗体が使われる。
また、新薬も相次いで登場しており、2016年以降、「リアルダ」や「レクタブル」「ゼルヤンツ」などが承認を取得している。「リアルダ」は、持続的に有効成分が放出されるよう設計された5-ASA製剤であり、従来の経口メサラジン製剤は1日3回投与が原則であったが、リアルダは1日1回の投与で済むのが最大の特徴である。ステロイド剤「レクタブル」は国内初の泡状製剤(注腸フォーム製剤)である。
中等症から重症向けでは、2017年に抗TNF-α抗体「シンポニー」の適応拡大が承認され、2018年にはJAK阻害薬「ゼルヤンツ」も適応拡大の承認が取得された。
2018年には抗α4β7 インテグリン抗体製剤である「エンタイビオ」も発売され、治療薬の市場も拡大が予想されている。エンタイビオと同じα4インテグリンを阻害する薬剤であるカロテグラストメチルは、国内で臨床第3相(P3)試験を実施中で、承認されれば世界初の経口α4インテグリン阻害薬となる。
このように、患者数の増加と相次ぐ新薬の登場で、潰瘍性大腸炎治療薬市場は今後、ますます拡大していくと思われる。