胃潰瘍の発生要因は、ピロリ菌の感染によるだけでなく、ストレスにより分泌されたホルモンが胃周囲の栄養血管を収縮させることも一因と考えられている。ただ、ストレスが胃癌の発生・進展に関与しているかは明らかでない。

自律神経は、主に活動期に活発になる交感神経系と安静時に活発に働く副交感神経系からなり、この2系の神経バランスが心身の維持に大切とされる。

以前より、ストレスに関連する自律神経の変化が癌に影響する可能性は示唆されていたが、癌組織にがどのように作用し影響するかは明らかではなかった。

今回、自律神経の1つである交感神経の緊張によるストレスが、乳癌組織内に入り込んで癌の進行や治療後の経過に深く関与し、さらに癌組織内の交感神経の密度が高い人は再発しやすいことが明らかになり、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。

これにより、胃癌においても、原因とされるピロリ菌だけではなくストレスが胃癌発生に一部関与している可能性も示唆され、癌組織に分布する自律神経を遺伝子治療などで操作する神経医療が、新たな癌治療戦略になる可能性もあると考えられる。