下腹部違和感と膨満感の原因は、両方とも蠕動運動の異常による場合が多いです。
蠕動運動が亢進した場合は違和感として、低下した場合は膨満感として感じます。
原因
下腹部違和感の原因
通常、大腸腸管は口側から肛門側方向へ向かって緩やかな蠕動運動により便を運びます。
心因的要因により、この蠕動運動が亢進すると違和感として感じます。
また蠕動部位に癒着があると、蠕動を行っている腸管の肛門側腸管はひきつれにより正常な運動を行えず、より強く違和感として感じる場合があります。
このように、大腸の蠕動運動が亢進すると下腹部の違和感の症状が現れますが、極端に亢進すると痛みとして感じます。痙攣に近い状態に達すると耐え難い疼痛となり緊急搬送されます。
下腹部膨満感
大腸の蠕動運動が低下した場合に膨満感として感じることが多いです。
大腸の蠕動運動機能が低下すると、便や腸内ガスが正常に肛門側へ運ばれずに停滞します。
これにより、お腹が張るような膨満感を感じるようになります。
大腸には多くの神経細胞があり、交感神経系や副交感神経系を介して脳と繋がっており、脳と腸が双方向に影響し合うことを脳腸相関といいます。
このため、うつ状態やストレスなどの抑制的心因により大腸運動機能が落ちると膨満感となります。
また、進行性大腸がんによる大腸閉塞により、便や腸内ガスが停滞し膨満感となるため注意が必要です。
以上の原因が長く続いたり大腸に強く影響を与えた場合は、膨満感に便秘を伴うようになります。
考えられる病気
下腹部違和感
過敏性大腸炎が最も多いです。
また、虫垂炎や子宮全摘などの下腹部の手術既往による癒着があるとより強く症状が発生し、大腸憩室炎なども頻度が高いです。
下腹部膨満感
うつ状態やストレスなどの心因的要因により運動機能が落ちると膨満感が発生します。
パーキンソン病にも多く発生します。
特に注意を要する疾患は進行性大腸がんです。
必要な検査
まず、大腸がんの除外診断のために大腸カメラ検査を行います。
大腸がんが大腸内部全周性にまで進行して閉塞状態になった場合は、膨満感だけでなく腹痛に近い症状に発展するため、早急の大腸検査が必要となります。
また、大腸カメラにより、原因となる大腸癒着部位や状態も明らかになります。
治療
薬物療法
過敏性大腸炎に対しては過敏性腸症候群治療剤や抗コリン剤などを処方します。
心因的疾患やパーキンソン病などに対しては、各々適応となる投薬を処方します。
外科的手術
進行性大腸がんに対しては速やかに外科的切除を行います。
下腹部違和感や膨満感が続く場合は早めに当院へご相談下さい。
<監修責任者>
医潤会内視鏡クリニック 理事長 中西弘幸