胃カメラ検査時に発見される早期胃がんは、ピロリ菌による粘膜萎縮が背景にあるため、診断に苦慮する場合がある。

今回、ソフトウェア富士フイルム株式会社は、上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得した。

「EW10-EG01」は、内視鏡診断支援機能「CAD EYE(キャド アイ)」の上部消化管病変検出機能を提供するソフトウェアで、AI技術を活用して開発された、上部消化管領域の内視鏡診断を支援する医療機器として日本で初めて承認された。

今回の承認により、「CAD EYE」の対象領域が従来の下部消化管から上部消化管まで広がる。

日本のがん統計によると、胃がんは、部位別のがんの罹患数・死亡数ともに第3位の癌であり、また食道がんにおいては、5年相対生存率が41.5%で、胃がん(同生存率66.6%)や大腸がん(同生存率71.4%)と比べて低い状況である。

ただ、初期のがんであれば、内視鏡手術や外科手術で切除できる可能性が高いことから、内視鏡検査で早期発見し、早期に治療に繋げることが非常に重要である。

しかし、早期の胃がん・食道がんの病変は、サイズが微小なケースや形状が平坦なケースがあることから発見が難しい、という課題がある。

そのため、波長の異なる複数の光の発光比率を変えて臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI」などの画像強調機能を用いて、炎症の診断や微小な病変の発見をサポートする内視鏡システムが提供されている。

さらに、胃がん・食道がんの早期発見をより強力にサポートすべく、胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出する内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」が開発された。

本ソフトウェアは、病変が疑われる領域を検出すると、対象領域を枠(検出ボックス)で囲って表示するとともに報知音を発して、医師による検出を支援する。

2020年に「CAD EYE」の第一弾として、大腸内視鏡検査におけるポリープなどの病変検出および鑑別を支援するソフトウェア「EW10-EC02」が発売されているが、今後、「EW10-EC02」に「EW10-EG01」を加えて、「CAD EYE」の対象領域を従来の下部消化管から上部消化管まで広げていくことが期待される。

今後も、内視鏡診断のワークフロー全体を支援するAIソリューションの提供により、検査の効率化と医療の質の向上、人々の健康維持増進への貢献が期待される。