2022.10.11
大腸カメラによる高齢者早期大腸癌内視鏡治療におけるリスクとメリット
本邦では65歳以上の人口の増加により高齢化率は28.4%となり、75歳以上人口は1,800万人を超え、総人口の14.7%を占める社会となった。
医療において高齢者・超高齢者と区分するかの定義はいまだ議論されているが、近年の老年化現象に関する種々のデータの経年的変化の検討から従来の65歳以上ではなく75歳以上を高齢者の新たな定義とすることが提案されている。
一方、大腸カメラ検査や内視鏡的切除術(ESD)の普及により、早期大腸癌に対する内視鏡的切除が超高齢者に対しても安全に行われるようになっている。
内視鏡治療は外科手術と比較して低侵襲とされている。
しかし、大きな穿孔・腹膜炎などの重い偶発症の発生頻度が少ないながらも生じる危険性がある。
発生時は結果的に外科的手術になり、最悪の場合は一期的人工肛門の増設となる高侵襲を与え、生命が危険となるリスクが常に存在する。
大腸ESD/EMRガイドラインでは、「高齢者においては、平均余命や併存疾患、肉体年齢を考慮し、病変を切除することによって期待されるメリットが、切除に伴う偶発症のリスクを上回ると判断される場合にのみ、内視鏡治療をすべきである」と記載されている。この「メリット」とは、癌の治癒切除に加えて、大腸癌が局所で増大することによる消化管狭窄や疼痛などによる生活の質(quality of life;QOL)の低下の予防という意味を含む。