食生活の欧米化により、胃酸分泌量が増加し、胃酸逆流による下部食道粘膜炎症を惹起し、食道癌の発生の危険性が上昇する。

欧米では、Barrett食道腺癌(Barrett's adenocarcinoma;BAC)は各癌腫において最も増加率が高い。

米国では1995年頃より扁平上皮癌を抜き食道癌の主組織型となり30年間で有病率·死亡率は6~7倍に急増している。

一方、本邦でも日本食道学会の全国集計において全食道癌におけるBACと食道腺癌を合わせた割合は2002年に2.4%、2012年には7.4%と約10年間で約3倍に増加している。

また、背景粘膜に関して、欧米では最大長が3cm以上のLSBE (long segment Barrett's esophagus)の有病率が2~7%であるが、本邦の有病率は0.35%であり、圧倒的に SSBE (short segment Barrett's esophagus)が多い。

さらに、Barrett食道の長さによって発癌率は異なり、SSBEでは年率0.19%、LSBEでは年率0.33~0.56%と報告され、LSBEはSSBEに比べ発癌率が2~3倍高い。

このようなLSBEとSSBEの割合の違いも欧米と本邦の発癌率が異なる根拠であるが、本邦のBAC発生は明らかに欧米に追随しており、背景粘膜の違いをもとに内視鏡診断や病理診断を検討することが重要と考えられる。