下血症例の場合、経緯や出血の色などにより、ある程度の部位は把握可能である。まず、上・下部内視鏡検査を行い、異常がない場合、小腸出血を疑う。

カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)とバルーン内視鏡(balloon assisted enteroscopy: BAE)の登場により、小腸出血に対する診断戦略は大きく変化した。従来、消化管出血は upper gastrointestinal (GI) bleeding(上部消化管出血)と lower GI bleeding(下部消化管出血)の2つに大別されてきたが、「CE や BAE による検査が適している十二指腸乳頭から回腸末端までの消化管出血」として mid-GI bleeding(中部消化管出血)と提唱される。

また、「原因不明の消化管出血(obscure GI bleeding:OGIB)」の定義はさまざまだが,本邦では上部・下部消化管内視鏡で出血源を特定できない場合に、OGIB と定義され、上記の理由により、小腸出血を疑う場合に、mid-OGIBとして緊急内視鏡検査が施行される。

内視鏡的止血術を行うためには、出血点をピンポイントで同定することが必要だが、小腸は他の消化管に比べて内腔が狭いため、血性腸液で内陸が埋まりやすい。

出血が持続している場合には、血性腸液を吸引してもすぐにまた血液が貯留する。送水観察で出血点を同定できる場合もあるが、出血の勢いによっては血液が水とすぐに混ざりあい、良好な視野を得にくい。

この問題を解決する方法として、水の代わりに透明な gel を注入する gel immersion法がある。

2020年に、この方法に用いる透明な gel として、視野確保性能と注入のしやすさを両立できるよう粘弾性を最適化したビスコクリアが発売された。

ビスコクリアを鉗子口から注入すると、血液とすぐには混ざりあわず透明な空間が作り出され、良好な視野が得られ、発見された出血点に対し、追加注入しながら、透明な空間のなかで止血処置を行う。